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ベントの雑学


ベント[Vent]

 服飾用辞典によると「馬乗り」のことをベントといいます。もともとスーツにはベントなるものはありませんでしたが、貴族のたしなみである乗馬の際に着まわしが悪いということで、上着の裾の真ん中に割れ(ベント)を入れて着まわしを良くしたそうですね。これがセンターベント。さらにその割れを両サイドに入れた方が着まわしが良いであろう事は、わりと簡単に想像がつきますよね。このようにしてサイドベンツが生れたということになります。

 これをふまえて……乗馬することは外出を意味しますから、外出着にはベントがあってもいいのですが、フォーマルスーツにはノーベントが正しいと言えるわけですね。実際に私が持っているノーベントの服は、黒いフォーマルスーツだけということになっています。ここではトラッドな上着のベントに着目して、そのパターンをご覧いただきましょう。

 私が持っている数の多い順に登場しますが、フックベントのセンターベントフックベント以外のセンターベント45度のセンターベント、そしてサイドベンツです。

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◆まずは、センター&フックベント
VANブレザーの後ろ姿 VANのフックベント
こちらVANブレザーのセンターベントです。アイビー好みのフックベントになっています。 白い矢印の箇所が、かぎ形に曲がっているのがわかりますね。これがフックベントです。
VANのフックベント拡大 フックベント[Hook vent]

左のアップ写真だとウェルトシーム(縁縫いのステッチ)がよく効いて、フックベントが浮き上がって見えますね。これらはアイビーモデルのジャケットの大きな特徴で、愛好者には堪らない魅力のひとつです。私の持つブレザーはすべてこのパターンです。

ほかの人のブレザーやジャケットの後ろ姿がそこにあるとき、私の視線は自然にこの辺りにいっています。それがセンター&フックベントだったりすると、もう嬉しくなってしまいます。

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◆これも、センター&フックベント
※写真をクリックすると拡大表示します
J.PRESSのスーツジャケット J.PRESSのフックベント
よくご存知の方なら、一目でJ.PRESSですか?と聞くでしょうね、赤いパイピングとこの後ろ姿…。これもセンター&フックベントになっています。 下の写真と比べるとよくわかりますが、バックシーム(背縫い線)からのラインが、矢印の個所でかぎ型に曲がっています。私のスーツの上着は基本的にこのパターンです。

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◆そして、フックベント以外のセンターベント
Kentのジャケット Kentモデルのセンターベント
こちらKentのジャケットです。じつは、上のジャケット(J.PRESS)とは同色同生地ながら、このセンターベントはフックベントではないのがおわかりでしょうか。 Kentモデルのセンターベントは、ご覧のようにフックベントにはなっていません。バックシーム(背縫い線)から続く自然なラインです。ニューヨーカーのジャケットなどもこのタイプです。

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◆こちらは、45度のセンターベント
ブルックスのスーツ ノーベント?
こちらブルックス・ブラザーズのスーツジャケットの後ろ姿です。 すっきりした後ろ姿で、ノーベントにも見えますよね。でも、左下の写真をご覧ください。
※写真をクリックすると拡大表示します
ブルックスのセンターベント 45度のステッチ
ほら、よく見るとじつはセンターベントです。ところが、さらによく見るとちょっと特徴があるのですが…
それでは、右の写真をご覧lくださいね。
ブルックスのセンターベントは、45度のミシン縫いで止められています。45度は、あらゆる力に耐えるように計算された角度だと、ブルックスさんの主張が聞こえるようです。

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◆そしてこちらは、サイドベンツ 
サイドベンツ サイドベンツ
こちらは、J.PRESSのニューポート・ジャケットの後ろ姿です。サイドベンツは、センターベントよりはフォーマルだと感じるのは私だけでしょうか。 このタイプのサイドベンツは、両サイドの背縫い線に沿って自然なラインを保ったままベントが切られています。裾を捲り上げるとこのとおり。

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